Sound Tracks > Spaghetti Western | ||||||||||||||||
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Artist | ||||||||||||||||
ANTONIO GARCIA ABRIL |
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Title | ||||||||||||||||
TEXAS, ADDIO |
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Review |
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95年にキングから全29曲を収めた世界初のデジタル・リマスターCDが出たが、本盤は全18曲ながらそれより10分近く収録時間が長い約62分の完全盤。新たな音源が加わっただけでなく、おそらく1曲が1、2分だった断片をつなぎあわせて1曲として再構成したものと思われる。オリジナル重視でいくならば日本盤だが、トータル・アルバムとしての完成度なら本盤だろう。 作曲者のアントン・ガルシア・アブリルはスペイン人。アコースティック・ギターとオーボエが紡ぎ出す繊細でまろやかなイントロに導かれ、陰翳にみちたヴォーカルがかぶさるメイン・タイトルは、颯爽としたヒロイックなテーマ曲が多いマカロニ音楽にあって異彩をはなつ。マカロニ音楽のプロトタイプがモリコーネであることはいうをまたないが、多くのエピゴーネンたちはモリコーネの明快で表層的な側面のみをとりだして模倣している。これにたいし、アブリルはモリコーネの音楽がもつ広範なバックグラウンドや方法論を掘り下げたうえで、アブリル流のスコアに組み替えているのがよくわかる。 モリコーネが追跡のシーンなどによく用いるスネアの軍楽的なリズムにエレキ・ギターがからまるハイピッチなパターンや、対決のシーンで用いる静寂から徐々に緊張感を盛り上げていくトランペット・ソロなどのパターンなどは、どの作曲家も一様に模倣する。だが、多様な打楽器を現代音楽風に使って不穏な緊張感を演出してみたり、パイプオルガン風のハモンド・オルガンやハープシコードを使って宗教めいた旋律を執拗に反復してみたりするモリコーネならでは手法は、マネしようと思ってもそうそうできるものではない。ところが、アブリルはこれらもほぼ完璧に自分のものにしている。 ほかにも、ギター、バンジョー、ホンキートンク・ピアノを使った陽気なポルカ、マリンバとギターのコンビネーションによる優雅なワルツ、物語の舞台とはまったく無縁のメキシコ中部の民謡マリアッチを気どった音楽なども、マカロニ音楽におけるモリコーネの常套手段だ。そして、モリコーネ的手法によりながらアブリルらしさがもっともよく発揮されているといえるのが、5分48秒におよぶアコースティック・ギター独奏と2重奏からなる'CANTINA'。キューバ生まれのアバネーラ(ハバネラ)のリズムをとりいれたスペイン調とメキシコ調とがかわるがわる顔をのぞかせる繊細で美しいナンバー。 このようにどの曲も綿密でよく練られたものばかりでアブリル作品集として聴いてもじゅうぶんに通用する。あえて難をいえば、ひとつひとつの楽曲が端正でお行儀がよすぎることだろう。 |
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(6.8.03) |
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